Speech

セイラーズ フォー ザ シー 日本支局 発足記念基調講演
「子孫のために海洋食料資源を確保するために」

米国には、現在結成中のセイラーズ フォー ザ シーと同様のNGOの力強い伝統があります。例えば、トラウト・アンリミテッド(Trout Unlimited)は、フライフィッシングを楽しむ人々が鱒の生息する川を保護するために設立した団体、オージュボン(Audubon)は、鳥の営巣地や渡り鳥の飛来地を保護するために鳥類愛好家が設立した団体、サーフライダー(Surfrider)は、地元のビーチを救済するためにサーファーが設立した団体です。つまり、レクリエーションのために資源を利用している人達が、その資源を保護するための団体を自ら設立しているのです。

米国には、250万人の船舶操縦者がいます。また、それ以外にもパワーボート操縦者の数が1000万人に上ります。これらの団体が一致団結できる方法が見つかれば、非常に強い影響力を発揮できるでしょう。セイラーズ フォー ザ シーは、このような船舶操縦者を教育して救済チームの活動メンバーになることを奨励し、人間による不注意な行為から海を守ることを目標としているのです。

今「人間による不注意な行為」と述べましたが、これは人間による問題の大部分が、貴重な海に危害を与えることを望んで意図的に引き起こされたわけではないからです。というよりも、一見広大で力強い海という生態系に対して、害を及ぼす行為を積み重ねる危険性について、我々人類は最近までほとんど気が付かなかったのです。

審議会による最も衝撃的な発見の一つは、サイエンス(Science)誌の論説から得たものです。この論説は、人間の知恵と産業テクノロジーによって、わずか50年間で90%の大型魚類が捕獲された事実を明らかにしているのです。ここで、大型魚類を滅亡させるような陰謀は何も存在しなかったことに注意してください。ただ、非常に多くの大型漁船によって、魚の供給量の低下が促進されたに過ぎないのです。

私は、あらゆる種類の魚介類を食べるのが好きです。メイン産ロブスター、ニューイングランド産タラ、メキシコ湾のエビ、もちろん日本の刺身も大好きです!魚介類を中心にした食生活は、肉類を中心にした食生活よりも健康によいと言われます。米国では、魚介類のレストランに人気が集まっています。日本風の寿司バーも人気です。このように、魚介類に対する健康的な需要が非常に高まっています。

ところが、このように人気の魚介類が以前ほど豊かに生息していないと警告する兆候が見られるのです。既に世界規模で、人間が消費する魚介類の半分は養殖に依存しているのですから。そこで、以下の疑問を持つことが必要であると考えます。養殖による魚介類は本当に安全か?魚介類の養殖産業は、どの程度持続可能か?天然魚の個体数にどのような影響があるのか?

畜産業と同様に、囲いの中で鮭を養殖するなど、非常に密集した状態で魚を飼育すると病気のリスクが高くなり、魚の品質も損なわれる可能性があります。さらに、養殖魚が逃げ出すと天然魚の個体数にも影響が出ます。そして、養殖魚の餌となる海洋性タンパク質自体が減少している中で、この方法を持続できるかどうかにも疑問が残ります。 現在米国では、消費者、起業家、天然魚の個体数を全て保護できる水産養殖のための規制体制を開発中です。この体制を確立するには、さらに長期間かかります。

しかし日本人の食生活が主に魚に依存しているため、日本では状況がかなり異なると聞いています。我々の食文化が非常に異なることは理解できますが、日本の魚と米国の魚の生物学的特性が大きく異なるとは考えられません。雌の魚は、十分に成長するとより多くの卵を生むのが普通です。若い魚は、捕食動物から隠れて成長するため「複雑な生息地」を必要とします。どの魚種についても、種の持続性を脅かさずに「捕獲」できる量には限界があります。