Speech

セイラーズ フォー ザ シー 日本支局 発足記念基調講演
「子孫のために海洋食料資源を確保するために」

かなり最近まで、具体的には20世紀の初頭まで、世界の総人口が70億人ではなく20億人に近かった頃は、すべての人に対して十分な量の魚が存在すると考えられていました。しかし今日、これはもう当てはまりません。例えば中国では、人口と豊かさの両方が上昇するに従い、中国人による海洋性タンパク質の需要が大幅に増加することは避けられません。

必然的に、人間による需要、技術的な能力、限りのある資源という要因により、魚介類を捕獲する「権利」を誰が持つかについて深刻な意見の食い違いが生じます。例えば、自分の国か、相手の国か、という問題です。また、豊かな国か、貧しい国か、という問題です。そして、現在の子供たちのためか、それとも将来の子供たちのためか、という問題です。そこで我々は国家として、またグローバル共同体として、このような質問への回答を得るための適切な仕組みを生み出すことが最も重要なのです。

日本を含めて130を超える国々が海洋法条約を批准しているにも関わらず、米国上院が依然として批准していない事実は、正直なところ恥ずかしく思っています。今後北極の氷冠が溶け、これまで船舶が運航できなかった海域にも開放水域ができると、米国も条約に調印して魚介類、鉱物、運行経路に関する権益を保護するよう迫られることが予想されます。

北極の氷冠が完全に溶けると、ロッテルダムから横浜までの航海距離が6436キロ(4000マイル)ほど短縮されるので、海運業者にとっては莫大な節約になると同時に、救済機能や応答機能がほとんどない海域で大規模な原油流出が起こった場合、その海域の水質の健全性に対するリスクも比例して膨大になります。

今もなお、我々の海は食料の不足した世界を養うことができる、巨大でしかも大部分が無償の資源であり、産業レベルと職人的漁師レベルの両方で大勢が働く莫大な利権を有し、活気ある沿岸経済を支援していると考えられています。しかしこれは、小規模な漁団と大規模な漁団、漁獲装置やターゲットとする魚介類の違い、現在の子供たちと未来の子供たちなど、対立することの多い利害のバランスをとるため、各国政府が十分な安全対策を構築することができて初めて可能となることなのです。

そこで、我々全員が直面している課題は、共に現在を生きつつも異なる場所で生活する我々の間で魚類や漁業による収益を割り当てる方法について、また、今日を生きる人々とまだ生まれていない人々の間に魚類を割り当てる方法について「公正かつ透明な決定」を行うことであると、私は考えます。

最後に申し上げたいのは、「我々の胃袋、財布、精神は、海から恩恵を受けている」ということです。

私は、このような問題について皆さんと議論できる機会を心待ちにしております。また、質問がおありでしたら、どのようなものについて喜んで回答したいと思います。

ご清聴ありがとうございました。